これらの謎に迫っていくと、生物が進化の過程である種の最適化問題を解いていることが分かります。こうした考えをもとに効果的な計算手法を実現することが、進化論的手法の目的であります。この手法は、最適化問題の解法、人工知能の学習、推論、プログラムの自動合成などに広く応用され、自然に学ぶ問題解決(Problem Solving from Nature)を目指すものです。
進化論的手法は、生物の進化のメカニズムをまねてデータ構造を変形、合成、選択する手法です。この方法により、最適化問題の解法や有益な構造の生成を目指します。
例えば、飛行機の設計を考えてみましょう。飛行機などのもの作りで大切なのは必ずしも新奇な物を作ることではありません。独創的な天才肌の職人は確かに必要ではありますが、多くの場合奇抜なデザインは成功しません。それよりも重要なのは、過去の設計物のマイナーチェンジ、合成、そして取捨選択です。これはまさにWright兄弟らの飛行機の設計に用いられていた原理です。上で述べた過程は、生物の(遺伝子の)突然変異、交差、及び選択淘汰と同じです。
つまり、人間は知らず知らずのうちに生物の進化の考えを導入し、最適な人工物の設計に用いていたのです。